患者さんが自分で書いた病名に返信で触れてもいい?

先生、「花粉症の治療で通ってます、先生が優しい!」って口コミが来たんです。うれしいので「花粉症のつらい時期にお役に立てて何よりです」って返そうかなと思ってて。それって大丈夫ですよね?

うれしい口コミですね。ただ、ここが大事なんですけど、返信で病名には触れないほうが安全なんです。患者さんが自分で書いたことでも、医院が返信で触れると意味が変わってしまうんですよ。

えっ、本人が書いてるのにダメなんですか? 同じ内容を繰り返すだけなのに…。
好意的な口コミほど、病名や治療の内容が具体的に書かれやすいものです。「インプラントの術後も丁寧に診てもらえた」「子どもの中耳炎でお世話になった」といった口コミは、医院としてはとてもありがたい声です。
ただし、その内容に返信で触れるかどうかは、「うれしいから」ではなく「医療機関として何を公にしてよいか」で考える必要があります。
口コミに書かれやすい個人情報
口コミには、投稿者本人が次のような情報を書いていることがあります。どれも、医院が返信で繰り返すと問題になりうる情報です。
口コミに書かれやすい、返信で触れないほうがよい情報
- 病名・症状(花粉症、うつ、更年期の症状など)
- 治療・検査の内容(インプラント、内視鏡検査、手術名など)
- 来院日や通院の期間(「先週」「3年通っている」など)
- 担当した医師・スタッフの名前
- 家族の受診に関する情報(「娘が」「母の付き添いで」など)
「本人が書いた」と「医院が認めた」は別物
口コミに書かれた病名は、あくまで投稿者本人の自己申告です。本当にその人が書いたのか、内容が正確なのかは、ほかの読者にはわかりません。
ところが、医院が返信で「花粉症のつらい時期に〜」と書くと、医療機関が「この人はうちで花粉症の診療を受けた」と公に認めた情報に変わります。
しかも口コミの投稿者名は、実名やそれに近いアカウント名で表示されることがあります。医院の一言が、特定の人の受診の事実や病気を広く知らせてしまうおそれがあるのです。
返信が守秘義務・個人情報保護の問題になりうる理由

うーん、なんだか怖くなってきました…。それって、法律的にもまずいってことなんですか?

正直なところ、「返信で触れたら必ず違法」と言い切れるわけではないんです。ただ、医療機関には守秘義務と個人情報保護という2つのルールがあるので、触れない運用にしておくのが安全なんですよ。
ここでは、口コミ返信に関係する2つのルールを整理します。どちらも医療機関で働く人なら日頃から意識しているものですが、口コミ返信という場面に当てはめて考えることが大切です。
医療従事者の守秘義務
医師・歯科医師・薬剤師・看護師などには、法令で守秘義務が定められています。たとえば刑法134条は、医師や薬剤師などが正当な理由なく、業務上知り得た人の秘密を漏らすことを禁じています。
違反した場合の罰則は「6月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金」です。看護師などほかの職種にも、それぞれの資格法で同じような守秘義務があります。
さらに、刑事上の責任とは別に、プライバシーの侵害として民事上の責任を問われることもあります。日本医師会の資料でも、守秘義務違反がプライバシー侵害などの不法行為にあたる可能性が指摘されています。
病歴は「要配慮個人情報」
個人情報保護法では、病歴や診療の内容は「要配慮個人情報」という特に慎重な取り扱いが求められる情報にあたります。
個人情報保護委員会と厚生労働省のガイダンスでは、要配慮個人情報を第三者に提供するには、原則として本人の同意が必要とされています。口コミへの返信は、誰でも読める場所に書き込むことです。院内で知り得た診療の情報を、返信に書き込まないことが基本になります。
患者さんが自分で公開した内容に医院が返信で触れた場合、それが直ちに法律違反になるかは、個別の事情によって判断が分かれます。ただ、守秘義務違反やプライバシー侵害を問われるリスクがある以上、触れない運用にしておくのが安全です。具体的な事例で迷う場合は、弁護士などの専門家に相談しましょう。
医療広告ガイドラインとの関係
口コミへの返信について、医療広告ガイドラインに直接の記載はありません。ただ、返信は医院の名前とともに公開されるため、内容によっては広告と受け取られるおそれがあります。
特に、口コミに書かれた治療の効果に同調して「おかげさまで症状が良くなって何よりです」と返すと、体験談の効果を医院が強調しているように読めてしまいます。この点からも、病名や治療効果には触れないほうが無難です。
NG例とOK例 — 受診の事実を認めない返信の書き方

じゃあ、実際にはどう書けばいい感じですか? 病名に触れないと、なんだか冷たい返信になっちゃいそうで…。

よく聞かれるんですが、コツは「その人だけ」ではなく「読んでいる全員」に向けて書くことです。感謝と、医院として大事にしていることを伝えれば、冷たくはなりませんよ。
返信の原則は、病名・治療名・来院日・担当者・院内でのやりとりを書かないことです。そのうえで、感謝の気持ちと、医院の姿勢を伝えます。
高評価口コミのNG→OK書き換え
口コミ:「花粉症の治療で通っています。先生が優しく説明してくれて安心できました。」
NG:「花粉症のつらい時期にお役に立てて何よりです。症状が落ち着いてよかったです。」
OK:「温かいお言葉をありがとうございます。わかりやすいご説明を心がけておりますので、そう感じていただけてスタッフ一同うれしく思います。今後も通いやすい環境づくりに努めてまいります。」
NG例は、病名と「症状が落ち着いた」という診療の経過を、医院の側から認めてしまっています。OK例は、口コミのうち「説明がわかりやすい」という医院の姿勢に関わる部分だけに応えています。
低評価・事実と異なる口コミのNG→OK書き換え
いちばん危ないのは、事実と違う低評価の口コミに反論したくなったときです。「カルテを確認したところ」「当日は○○の検査をご説明しました」と書くと、受診の事実と診療の内容をまとめて公開してしまうことになります。
口コミ:「検査の説明が何もなく、高い費用だけ取られた。」
NG:「カルテを確認したところ、当日は胃カメラの必要性と費用について10分ほどご説明しております。」
OK:「ご不快な思いをおかけし、申し訳ございません。ご説明の内容について行き違いがあった可能性もございますので、お手数ですが受付までご連絡いただけますと幸いです。直接お話をうかがい、改善に努めてまいります。」
事実関係の説明は、返信ではなく直接の連絡で行うのが基本です。返信では、反論ではなく「連絡の窓口」を案内する形にしましょう。低評価口コミへの向き合い方は、下の記事でも詳しく解説しています。
「ご来院いただき」も場合によっては避ける
「ご来院いただきありがとうございます」「先日は」といった言い回しも、受診を前提にした表現です。一般的な内科などでは問題になりにくいものの、精神科・婦人科・泌尿器科・美容医療など、通院を知られたくない方が多い診療科では避ける判断もありえます。
その場合は「温かいお言葉をありがとうございます」のように、受診に触れずに感謝を伝える書き方にしましょう。

あー、なるほど! 「その人への返事」じゃなくて「みんなに見られてる手紙」って考えればいいんですね。スッキリしました!
返信する前の5つのチェックポイント
- 病名・症状・治療名・検査名が入っていないか
- 来院日や通院の期間が入っていないか
- 医師・スタッフの名前が入っていないか
- 「カルテ」「当日は」など、診療の記録ややりとりに触れていないか
- 治療の効果を医院の側から強調していないか
返信で済ませるか、削除依頼に回すか — 使い分けの考え方

口コミに個人情報が書いてあるなら、いっそ削除してもらったほうが早くないですか?

そこはなかなか難しいところで。本人が自分のことを書いた口コミは、基本的に削除の対象になりにくいんです。削除依頼を考えるのは、ほかの人の個人情報が書かれている場合ですね。
個人情報が書かれた口コミといっても、誰の情報なのかによって対応が変わります。「本人の情報か、本人以外の情報か」で振り分けると判断しやすくなります。
返信で対応する口コミ(本人の自己申告)
投稿者が自分の病名や治療内容を書いた口コミは、本人が自分で公開した情報です。原則として削除依頼ではなく、返信で触れない対応が基本になります。
返信をしないという選択もありますが、ほかの読者は医院の返信も見ています。病名に触れずに感謝を伝える返信をしておけば、丁寧な医院という印象を残せます。
削除依頼を検討する口コミ(第三者の個人情報・スタッフ名・個人攻撃)
Googleのポリシーでは、同意なく投稿された他人の個人情報(氏名や顔など)や、個人への嫌がらせ・晒し行為が禁止されています。次のような口コミは、削除依頼を検討する対象になります。
削除依頼を検討する口コミの例
- 家族や他の患者さんの氏名・病状が書かれている
- スタッフの実名をあげて個人攻撃をしている
- 特定の人を晒すような内容になっている
なお、スタッフの名前が入った口コミは、好意的な内容でもスタッフ本人の意向を確認してから扱いを決めましょう。返信でスタッフの名前を繰り返さないことも大切です。削除依頼の具体的な手順は、下の記事で解説しています。
法的な対応が必要か迷うときは専門家へ
名誉毀損にあたるような口コミや、削除依頼をしても消えない悪質な投稿など、法的な対応が必要か迷う場面もあります。自院だけで判断せず、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
院内でルール化する — 返信担当者が迷わないために

うちは院長と事務長と私の3人で返信してるんです。人によって書き方がバラバラになっちゃいそうで…。

わかります、担当が複数いるとどうしてもそうなりますよね。だからこそ「返信に書かない情報」を院内で共有しておくのがいちばん効くんですよ。
口コミ返信は、担当者が複数いると判断がばらつきやすい業務です。「書かない情報」をはっきりさせておくだけで、迷う場面はぐっと減ります。
「返信に書かない情報」リストの作り方
この記事の「5つのチェックポイント」をそのまま院内のルールにするのが手軽です。紙に印刷して返信担当者のパソコンの近くに貼る、院内の共有フォルダに置く、などしておくと、返信のたびに確認できる状態をつくれます。
診療科によっては「ご来院いただき」を使わないなど、自院ならではのルールも書き足しておきましょう。
迷ったときの確認フロー
低評価の口コミや、事実関係に触れたくなる口コミは、投稿する前に院長がもう一度目を通す二段階のチェックにしておくと安心です。
返信文の下書きを作る仕組みを使う場合も、病名や治療内容が混ざっていないかの最終確認は人が行いましょう。院内の返信フローの作り方は、下の記事で詳しく解説しています。
メオクリでは、口コミへの返信の下書きを作り、元の口コミと並べて確認できます。下書きを使う場合も、病名や個人情報が入っていないかを担当者が見てから投稿する流れにしておきましょう。
まとめ

では、今日のポイントをまとめますね。うれしい口コミほど、返信の一言には気をつけたいところです。
📋 この記事のポイント

めっちゃ勉強になりました! さっそく「書かない情報リスト」を印刷して、院長と事務長にも共有します。あの花粉症の口コミも、病名なしで返信し直してみます!

いいですね! 病名に触れなくても、感謝の気持ちはちゃんと伝わります。患者さんのプライバシーを守る返信は、これから来院する方にとっても安心材料になりますよ。

Google口コミ返信テンプレート集(無料)
高評価から低評価・クレーム対応まで、そのまま使える返信文例集を無料でお届けします。
医療機関向け・守秘義務に配慮した文面です。
導入のご相談は お問い合わせ から



